ボクシングの複数階級制覇について

ランキングや記録

6階級制覇が最高

トーマス・ハーンズは身長185cmと2m以上のリーチを生かし、1988年11月4日に初めて5階級制覇を達成しました。その3日後には、シュガー・レイ・レナードもハーンズに続いて5階級制覇を達成しました。

その後、オスカー・デラホーヤとマニー・パッキャオがこれらを超え6階級制覇を成し遂げております。(パッキャオは権威のあるリングマガジン認定王座を含めて8階級のため海外では8階級制覇と紹介されることも多い。)

オリジナル8階級

ボクシングは階級制なのですが、現在はミニマム級(47.62キロ以下)からヘビー級(90.72キロ以上)まで17階級もあるのです。

ボクシングはもともと無差別だったのですが、1886年にライト級(61.23キロ以下)ができ、続いて1890年にミドル級(72.57キロ以下)が創設されました。

その後、1900年初旬に以下のオリジナルの8階級(Original 8)が制定されました。
フライ級(50.80キロ以下)、バンタム級(53.52キロ以下、フェザー級(57.15キロ以下)、ライト級(61.23キロ)、ウェルター級(66.68キロ以下)、ミドル級(72.57キロ以下)、ライトヘビー級(79.38以下)、ヘビー級(79.38キロ以上)

全階級の半分を制覇しようとした王者

オリジナル8階級の時代は、団体も分かれいなかったので(現在は4団体)、世界王者は世界に8人しかいなかったのです。(現在は70人以上)

だから、世界王者の価値や知名度はとんでもなく高かったのでした。

そんな時代に3階級制覇を達成したボクサーが、ヘンリー・アームストロングでした。

ヘンリー・アームストロング 149勝101KO 21敗10分
元世界フェザー級・ライト級・ウェルター級王者、
ウェルター級最多防衛(19度)

ヘンリー・アームストロングは、身長わずか166cmですが、驚異的なスタミナと強打でフェザー級、ライト級、ウェルター級の三階級を同時に制覇した唯一のボクサーです。

1937年にまずはフェザー級のタイトルを取り、翌1938年にウェルター級のタイトルに挑戦したのですが、現在ならウェルター級はフェザー級より4階級上の階級に当たり、アームストロングは当日体重が足りなかったので、試合前に大量の水を飲んでリングに上がりました。

体格とパワーに劣るアームストロングはウェルター級王者のパンチを巧みに殺し、常に懐に入り込んで回転の速い連打で、信じられないことに4階級上の王者を圧倒し、見事に世界ウェルター級王座を奪取しました。

その後、ライト級王座も奪取し、三階級王座に同時に君臨しながらウェルター級のタイトルを19度も防衛しました

そして、1940年3月に4階級目の世界ミドル級王座に挑戦し、8階級しかない時代に4階級も制覇しようとしたのです。

世界王者が世界に8人しかいない時代なので、世界王者になることが至難の業でした。それを、4階級も同時に取ろうとするのですから、スゴすぎます。

結局、引分けで4階級制覇は失敗に終わりましたが、ヘンリー・アームストロングの偉業はボクシング史に輝いております。

現代のボクサーたちが取り組む、近代的なフィジカル・トレーニングもなく、サプリメント等の補助食品を含めた食事のサポートもないのにもかかわらず、体格で劣るアームストロングが大きなボクサーを打ち破ったのは、本当に驚きです。

幻の3階級制覇

日本にも大偉業を達成しかけたボクサーがいるのです。

ファイティング原田選手はフライ級とバンタム級の2階級を制し、3階級制覇を目論み、WBC世界フェザー級王者ジョニー・ファメションに挑戦しました。(バンタム級は、歴代最強バンタム級王者エデル・ジョフレから奪取しました)

試合は原田選手が優位に進め、2Rに早速ダウンを奪いました。

この一戦は、王者ファメションの地元オーストラリア・シドニーで行われ、この日の採点は当時英連邦の規定に従って主審1人がジャッジを務めており、主審のウィリー・ペップはダウンを喫したラウンドの採点を「5-3」ではなく「5―4」とつけたように、公平な試合とは思えなかったのです。(また、原田選手がスリップダウンをしたのを、主審ペップはなぜかダウンと認めカウントを始めた)

加えて、王者ファメションが後頭部へのパンチ等反則をしても、いっこうに注意をしない不可解なレフェリングをしたので、原田選手は攻勢に出て、11Rと14Rにもダウンを奪いました。(14Rのダウンの時には、主審のペップがカウントの途中でファメションを支えるといった不可解な場面がありました。)

そして、原田選手が終始有利に試合を進め、明白にほとんどのラウンドのポイントを取って試合が終了したのですが、試合終了とともに主審のペップは引分けを宣告致しました。

さらに、警察隊がジャッジ・ペーパーを確認すると、判定がドローからファメションの勝利に変わったのでした。もう、この試合は不可解なことだらけで、ボクシング史の汚点というべき試合でした。

唯一の救いは、「疑惑の判定」「不名誉なホームタウン・ディシジョン」と地元でも批判されたことでした。

世界王者が倍増

現在は、ジュニア階級やミニマム級等増設され、17階級です。さらに、WBA、WBC、IBF、WBOと4つの団体が世界チャンピオンを認めているので、世界チャンピオンは70人ほどいる時代です。

だから、世界王者の価値は以前より低くなり、強い王者と戦うか、4団体を統一するか、複数階級を制覇しなければ、なかなか王者として認められない時代になりました。

しかし、日本人の世界王者が多くなったのは喜ばしい限りです。

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