ボクサーの必殺パンチ
前回、漫画やゲームの必殺技の元ネタになった必殺パンチと必殺パンチの使い手を紹介致しました。
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しかし、その必殺パンチがきかなかったボクサーが存在します。
今回は、必殺パンチが通用しなかったボクサー達を紹介致します。
クロスカウンターがきかない
1997年11月
ユーリ・アルバチャコフ vs チャッチャイ・ダッチボーイジム
WBC世界フライ級王座統一戦
クロスカウンターは、ボクシングのカウンター技の一種で、相手の左ジャブに対し右ストレート(又は右フック)をクロスするように放つ一撃必殺のパンチ。漫画「あしたのジョー」の主人公の矢吹丈の必殺技として、日本では有名になったパンチです。
クロスカウンターの使い手のユーリ・アルバチャコフは、クロスカウンターで多くの敵をなぎ倒しました。
しかし、ユーリが唯一黒星を喫した相手、チャッチャイ・ダッチボーイジムにはユーリのクロスカウンターがきかなかったのでした。
対戦した背景ですが、WBC世界フライ級王者ユーリは、9度目の防衛戦で右手中指を骨折した為1年以上ブランクを作り、その間暫定王者となったチャッチャイ・ダッチボーイジムと10度目の防衛戦を行いました。
23戦全勝の世界王者ユーリと31勝1敗の暫定王者チャッチャイ(1敗は2年前にユーリに敗れた)の戦いは、元トップアマ出身らしく序盤からハイテンポでレベルの高い攻防となりました。
しかし、23戦全勝の王者ユーリは慢性的な拳の怪我とこの頃は戦うモチベーションを失っているせいでいつものキレがなく、逆にリベンジを果たそうとするチャッチャイは万全の仕上がりからスピードに乗った連打でユーリの防御を崩して行きました。
ポイントで負けているユーリは終盤倒そうと必死に前に出ようとしますがカウンターで迎え撃たれ、また右クロスも防御され、ユーリは24戦目で黒星を喫したのでした。
フリッカージャブとチョッピングライトがきかない
アイラン・バークレー vs トーマス・ハーンズ
WBA世界ライトヘビー級タイトル戦(1992年3月)
1988年6月にトーマス・ハーンズは、バークレーにまさかのKO負けを喫しましたが、その後世界スーパーミドル級王座と世界ライトヘビー級王座を獲得し、史上初の世界5階級制覇を達成し、1992年3月にバークレーと再び相見えました。
バークレーはプロキャリアで60戦以上戦いましたが、後にハーンズが最もパンチ力があったとコメントしました。しかし、バークレーは、試合中は誰もが恐れたハーンズに対し、不器用ながら野獣のように前に出て強打を振るい続けました。
前回の対戦でハーンズをKOしたバークレーですが、この試合でもかませ犬扱いで試合を組まれたバークレーは、ハーンズに再び勝ってまぐれでないことを証明しようと必死にヒットマンのフリッカージャブや必殺のチョッピングライトに耐え、試合は12ラウンドを終え、判定決着になりました。
2-1(114-113、115-113、113-114)の判定で、バークレーが再びハーンズを番狂わせで破ったのでした。
スマッシュがきかない
マイク・タイソン vs ドノバン・ラドック
1991年6月(再戦)
ドノバン・ラドックは、フックとアッパーの中間の軌道を描くスマッシュと呼ばたパンチでKOを量産しておりました。
1991年3月、ラドックはタイソンと戦いましたが、7回TKO負けを喫しました。しかし、早すぎたレフェリー・ストップが物議を呼び、ラドックとタイソンは3か月後に再び相見えたのです。
スマッシュという一撃必殺のパンチを引っ提げたラドックは、タイソンとの試合前、「俺は奴の攻撃を恐れはしない。奴が入って来れば俺のパンチが火を噴く、奴が試合から逃げない事を祈るばかりだ」と自信満々に言い放ちました。
再戦も初対決同様序盤から火花を散らせ、タイソンは2Rと4Rにダウンを奪い優位に試合を進めました。
ラドックも中盤から反撃に転じ左スマッシュや右の打ち下ろし等、破壊力のあるパンチを繰り出し、タイソンを圧倒するシーンが度々出て参りました。
ラドックは盛り返しましたが、タイソンが鋭いコンビネーションパンチでポイントを押さえて行き、ポイントでは勝ち目が無いラドックはスマッシュを連発し、タイソンを倒そうと必殺パンチを連発しましたが、50cmを超える首回りを誇るタイソンはやはり頑丈で、多くのヘビー級ボクサーをなぎ倒したスマッシュを耐え抜き、試合は終盤へ差し掛かりました。
強打の怪物同士の戦いは、お互いKOパンチが炸裂しても意地で耐え、タイソンの鼓膜は破れ、ラドックの顎も砕かれましたが、KO決着必至のこの激闘は信じられない事に判定決着となりました。
タイソンはラドックとの激闘を終えた後、ラドックを恐れていたことを認め、「ラドックは非常に危険な対戦相手」とコメントしたのが印象的でした。
上記のように、ユーリの「右クロス」、ハーンズの「フリッカージャブとチョッピングライト」、そしてラドックの「スマッシュ」を耐えたボクサーが存在したのです。
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