【対戦を嫌がられた】ボクシング史上最も避けられたボクサーランキング

ランキングや記録

ボクシングの歴史を紐解くと、圧倒的な実力を持ちながらもタイトル挑戦の機会を得られなかった、または対戦を避けられたボクサーたちがいます。彼らは恐れられたがゆえに、キャリアの頂点に立つチャンスを奪われてしまいました。今回は、そんな「避けられたボクサー」をランキング形式でご紹介します。

1位:チャーリー・バーリー(Charley Burley)

獲得タイトル・戦績

チャーリー・バーリーは、世界カラード・ウェルター級およびミドル級王座を獲得しましたが、正式な世界タイトルには一度も挑戦することができませんでした。彼は83勝(50KO)12敗2分という素晴らしい戦績を残しました。

避けられた理由

伝説的トレーナーのエディ・ファッチは、バーリーを「自分が見た中では文句なしに最高のオール・ラウンダー」と絶賛しました。ミドル級時代のアーチー・ムーアを判定で破り、3つの異なる階級で世界チャンピオンを倒すという偉業を成し遂げています。

最も興味深いのは、シュガー・レイ・ロビンソンが唯一対戦を避けたとされるボクサーであったという事実です。ある試合でバーリーのリングサイドにいたロビンソンは、彼のファイトを見た後、マネージャーに「俺はバーリーと戦うには美しすぎる」と言ったと伝えられています。また、ロビンソンはバーリー戦のファイトマネーを2倍に引き上げ、事実上その対戦を不可能にしました。

バーリーは1940年代の「ブラック・マーダラーズ・ロウ(Black Murderers’ Row)」と呼ばれる、人種差別により世界タイトル挑戦を拒否された黒人ミドル級ファイター集団のリーダー的存在でした。卓越したディフェンススキルとそこから繰り出される鋭い右カウンターが武器のスポイラー型ボクサーで、その技術はロビンソンでさえ恐れるほどでした。

ファッチは後に「ロビンソンがバーリーを避けたというのは本当だ」と認めていますが、ロビンソンのキャリアに傷をつけたくないという配慮から、その詳細を語ることは控えました。結局、バーリーはその圧倒的な実力にもかかわらず、人種と「危険すぎる」という評判のために、世界タイトルへの道を閉ざされた悲運のボクサーとなったのです。

2位:サム・ラングフォード(Sam Langford)

獲得タイトル・戦績

ラングフォードは世界カラード・ヘビー級王座を獲得しましたが、正式な世界ヘビー級タイトルには挑戦できませんでした。驚異的な178勝(128KO)29敗38分という戦績を残しています。

避けられた理由

本来はライト級のサイズでありながら、階級不問でヘビー級まで戦った伝説的ファイターです。わずか身長5フィート6インチ(約168cm)という小柄な体格ながら、自分よりはるかに大きな相手を次々とノックアウトしました。その漆黒の肌から「ボストン・タール・ベビー」の異名で人気を博しました。

キャリアの中で、ジョー・ガンス、スタンリー・ケッチェル、フィラデルフィア・ジャック・オブライエンら8人もの世界チャンピオン経験者と対戦しました。1906年、後に黒人初の世界ヘビー級チャンピオンとなるジャック・ジョンソンと対戦しましたが、体格で30ポンド(約13.6kg)も上回るジョンソンに15ラウンド判定で敗れました。

しかし、ラングフォードは持ち前のスピードと強打でジョンソンを大いに苦しめました。ジョンソン自身も後に「サム・ラングフォードは私が対戦した中で最もタフな相手だった」と語っています。この試合に懲りたジョンソンは、チャンピオンになった後、二度とラングフォードと対戦しようとしませんでした。多くの黒人コミュニティは、ジョンソンがタイトルを守るためにラングフォードを避けていると信じていました。

さらに悲劇的なのは、ラングフォードがキャリア後期に視力を失いながらも戦い続けたことです。1926年に43歳で引退した時、彼は完全に盲目でした。偉大なヘビー級チャンピオン、ジャック・デンプシーでさえ「ラングフォードと戦わなくて良かった」と認めています。ラングフォードは、実力ではなく肌の色によって世界タイトルを拒否された、史上最も偉大な無冠の帝王と呼ばれています。

3位:デビッド・ベナビデス(David Benavidez)

獲得タイトル・戦績

WBC世界スーパーミドル級王座を2度獲得、現在はWBC世界ライトヘビー級王座を保持しています。戦績は29勝(24KO)無敗という驚異的な記録を誇ります。

避けられた理由

「メキシカン・モンスター」という異名を持つベナビデスは、強打と圧力スタイルで知られる現代の危険人物です。マイク・タイソンが命名したこのニックネームは、彼の破壊力を象徴しています。

特に、スーパーミドル級統一王者カネロ・アルバレスが長年対戦を避けてきたことで有名です。ベナビデスは何年もの間、カネロとの対戦を熱望し、WBCの指名挑戦者として22ヶ月間トップランキングに君臨していましたが、カネロは決して彼に機会を与えませんでした。

ある記者会見でベナビデスがカネロに直接対戦を呼びかけた際の態度を理由に、カネロは「あんな風に呼びかけてくる相手には金を払う必要はない」と発言しました。しかし多くのボクシングファンは、カネロがベナビデスの危険なスタイルを恐れていると考えています。

ベナビデス自身も「彼(カネロ)は、これが最もタフな試合で、負ける可能性があることを心の中で知っているんだ。それは確かだよ」と語っています。2024年、ベナビデスはカネロとの対戦を諦め、ライトヘビー級に転向しました。「私はできる限りのことをした。もう前に進む時だ」と語り、新たな階級で支配を始めています。

ESPNは彼を「最も避けられたファイター」と呼び、トッププロモーターのダン・グーセンも「彼は全ボクシング界で最も恐れられ、最も避けられているファイターだ」と評しています。強烈なパワー、若さ、高いKO率を持つベナビデスは、トップファイターたちにとって「リスクに見合わない相手」と見なされ続けているのです。

4位:ポール・ウィリアムス(Paul Williams)

獲得タイトル・戦績

WBO世界ウェルター級王座を2度獲得しました。戦績は41勝(27KO)2敗という素晴らしい記録を残しています。

避けられた理由

「パニッシャー(The Punisher)」の異名を持つポール・ウィリアムスは、ウェルター級にあって6フィート2インチ(約188cm)という異常な身長と82インチ(約208cm)というヘビー級並みのリーチを誇る「フィジカル異端児」でした。

このサイズアドバンテージに加え、サウスポースタイルと圧倒的なパンチ出力を持っていたため、多くの対戦相手が彼との対戦を回避しました。彼のプロモーターであるダン・グーセンは「ポールは全ボクシング界で最も恐れられ、最も避けられているファイターだ」と語っています。

6フィート1インチの長身サウスポーでありながら、ヘビー級のリーチとライト級の連打スピードを持つという、まさに悪夢のような組み合わせでした。147ポンド(ウェルター級)、154ポンド(スーパーウェルター級)、さらには160ポンド(ミドル級)でも支配的な力を見せつけました。

特にピーク時には、当時のスーパースター選手たち(トップランクやライバルジムのトップファイター)が「戦いたくない相手」として彼の名前をささやいていたと言われています。ウィリアムスはウェルター級史上最も長身のチャンピオンとして記録されており、その異様な体格と危険なファイティングスタイルが、多くのビッグネームとの対戦実現を阻んでいました。

悲劇的なことに、2012年5月にカネロ・アルバレスとの対戦準備中にバイク事故に遭い、腰から下が麻痺してしまいました。それでも彼は引退後、トレーナーとして第二のキャリアを歩み始めています。もし事故がなければ、ウィリアムスはさらに多くのタイトルを獲得していたでしょう。

5位:ファン・マヌエル・マルケス(Juan Manuel Marquez)

獲得タイトル・戦績

元世界4階級制覇王者という輝かしいキャリアを持つマルケスの戦績は、64戦56勝(40KO)7敗1分です。

避けられた理由

フェザー級時代のマルケスは、卓越したテクニックに加えて爆発的な攻撃力を持っており、相手を破壊する能力がありました。それゆえ、WBO世界フェザー級ランキングに驚異の22カ月連続で1位(指名挑戦者)に君臨していました。

当時のWBO世界フェザー級王者ナジーム・ハメドが、マルケスとの対戦を嫌がっていたことは有名です。エマニュエル・スチュワードをはじめとする多くのボクシング関係者が、「ハメドはマルケスとの対戦を避けるためにあらゆる手段を講じた」と証言しています。

実際、ハメドのコーナー陣全員が、プロモーターに「マルケスとの対戦を何としても避けるように」とアドバイスしていたと言われています。マルケスは3年以上もハメドの指名挑戦者の地位にありながら、WBOはハメドに他の対戦相手との試合を許可し続けました。

結果として、マルケスは「世界タイトルを持たない最高のファイター」と呼ばれるようになりました。彼はハメドの代わりに、同じように高いKO率を持つ危険なボクサーたちとばかり戦わされました。アガピト・サンチェス(22勝14KO)、エンリケ・フピテル(31勝中25KO)、シェーン・フレッチャー(25勝19KO)など、いずれも一撃必殺の破壊力を持つ相手ばかりです。

ESPNのアナリストは「フェザー級全盛期のマルケスは、ハメドに避けられるほど危険な存在だった」と評しています。マルケスは最終的に世界タイトルを獲得し、4階級制覇という偉業を達成しましたが、ハメドとの夢の対決は実現しませんでした。多くのボクシングファンは、これを「実現しなかった最高のスタイルマッチ」の一つと考えています。

まとめ

これら5人のボクサーに共通するのは、圧倒的な実力を持ちながらも、その強さゆえに機会を奪われたという皮肉な運命です。特にバーリーやラングフォードの時代には人種差別という社会的背景もありましたが、現代においても「危険すぎる」という理由でビッグマッチから遠ざけられるファイターが存在します。

彼らの存在は、ボクシングが純粋な実力勝負だけでなく、ビジネスやプロモーション、そして時には政治的な要素も絡む複雑なスポーツであることを物語っています。しかし同時に、これらのファイターたちの名前が今も語り継がれていることは、真の実力は時代を超えて評価されるという希望でもあるのです。

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